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  • Kei Kumagawa

11月のアンテナ

更新日:2019年11月25日

テレキャスターの録音が素晴らしい。

2019年11月23日。先日の手前のライヴの際に福岡市が誇る”問題アリ”シンガー・ソングライター、岡村釦(おかむら・ぼたん)さんから譲り受けた彼の新作CD-R集「リバーサイド」を聴いている。



岡村釦さんと初めて会ったのはいつだったろう。岡村さんは俺がEP「PNKLLR」(2014)をリリースした際のレコ発ライヴで俺を知ってくれたそうだ。後に聞いた話では確か(笑)。(※いや、いまシラフんなって思い返してみると、違うな(笑)。その前の最初のEP「SUNNY」のときだ。)



岡村釦は福岡市在住のアマチュア・ミュージシャンである。パンク・ロックと、ボサノヴァと、ポップスと、J-POPと、ラテン音楽と、ロックンロール。それらが綯い交ぜになった自作のミュージックを、とてもとても歪(いびつ)な方法論で、しかしとてもとても真っ直ぐに発する、稀有な、とてもとても稀有な存在だと、俺は勝手に思っている。こんな人は、俺は他には一人も知らない。誰も岡村釦のようには叫べない。あんなに、罠に掛かった朝の鼠のようには、誰も。勿論、褒め言葉だ。



福岡市を中心に、これまで数多のライヴ・イベントでご一緒したことがある。年齢的には先輩にあたる。ここは、正直に白状した方が良いと思う。俺が初めて岡村さんのライヴを観たときの感想は、「成る程ね」だった。失礼ながら言わせて貰うが、出会ったときには岡村さん(と彼の表現)は、はっきり言うと俺にとって脅威ではなかった。ああ、こういう感じね、って。悪い(笑)。はっきりと変わったのは、やっぱり彼の人生のステージが変化してからだと思う。誰だって、色んなことがあるじゃん。それは岡村さんや俺にもあるんだよ(笑)。色んなことが人生には起こって、モノを書く、描く、作る人間にはそのことが否応無しに良くも悪くも影響を及ぼす。変わる。人が変わる。時代だって変わる。誰も待ってはくれない。濁流のような世の中で藻搔いてのたうち回りながら、「待って!」と叫ぶ。癇癪(かんしゃく)を起こす。地団駄を踏んでまるで小さな子供のように泣きながら叫んで暴れる。多分、それが俺と岡村さんの共通点だと思う(笑)。


こういうことを言うと(書くと)、俺は怒られると思うんだが(笑)、俺から見ても岡村さんはまるで弟みたいなんだ(笑)。いや、本当に尊敬というか、存在を畏怖してはおるんですよ(笑)。なんじゃろ、俺は、この博多の街で独演スタイルでやってる人でね、正直、敵わないと思うのはナジオくんと岡村さんだけなんだよ。敵わない。その他の連中よりは俺が勝ってるって意味じゃなくて、ライヴを生で観たときにね、本当に思うよ。これは敵わないな、って。そしていつも、同時に思うんだ。そういう人が一人でも居て良かったなぁ、ってさ。俺にとっての、ヒーローなんだよ。岡村さんはヒーローなんて言われても嬉しくもなんともないと思うけど(笑)、俺は、岡村さんやナジオくんのライヴを観るときにはいつも思ってる。俺の権利さ(笑)! これからも勝手に思わせて貰うし、これからも俺はそれを求める。


そういう音楽を演奏する人は、今やね、とても、とても少ない。岡村さんとナジオくんは音楽もやり方もそれぞれ全然違うけど、俺は思う。こういうのが本物なんだ。ざまあみろ、と思うよ(笑)。勝手にな。


岡村釦の巨大な方法論とその提示、「リバーサイド」はCD-Rにして6枚組の大作である。

何しろ6枚組、全97曲である。ギター一本と歌、最小限のアンサンブルで鳴らされるそれは、ライヴでの彼の方法論とある意味近しいものだ。それを、「出来得る限りぶっきらぼうに聴こえるよう」に細心の注意を払って録音してある(笑)。音質は素晴らしい。Nikushimi Records主催の俺が保証する(笑)。


ディスク1からディスク6まで、曲順についてどれ程の作意があるのかまだ読み取り切れてはいないが、聴くたびに面白い。岡村釦さん自身のウェブサイト(http://x58.peps.jp/ossannova/)には今作についてこうある。



“「アルバム」という概念も必ず必要ではないと思えたりする。

レコード会社と契約をしてアルバム何枚出す、という時代があって、その時代のプロフェッショナルなアーティストたちは、アルバムに様々な表現の可能性を追求したのだと思う。


でもアマチュアでいつ作品を作っても出してもいい

どんな曲数で、どんな形態で出しても自由だとなれば果たして

アルバムというものは成立するのか?


今回「リバーサイド」という作品集をまとめながら、ずっと考えていた。

アルバムとしてコンパイルするならなにがしかのルールを決めた方がいい。同じようなテーマ別とか、単純にアコギとエレキ、ギターと鍵盤とか、厳密に制作順に並べるとか。


しかし出来上がった「リバーサイド」は実はまったく混沌とした塊になった。2019年の曲がディスク1にあったり、2014年の曲がディスク6にあったりする。

(中略)

結局これはアルバムじゃないなと思うし、ボックスセットでも、ベストアルバムでもない。

ただ「一つの塊の曲をCD-Rに入るだけ詰め込んだもの」ということでそれ以外のなにものでもない。”



勿論俺自身はね、この「リバーサイド」から、岡村釦を読み取ろうと繰り返し繰り返し聴いて、何かを(勝手に)彼から読み取るんだと思う。それでいい。誰にとっても、それに耐え得るだけの強度がこの作品にはある。


だから、嬉しい。まず手に入れられて嬉しいし、岡村さんの新作が出てね、それがちゃんとこういうレベルの高いものになっていて嬉しいし、本当にね、俺はほら、性格良くねーからな(笑)、周りの連中に勝手に思ってるよ、ざまーみろ!ってさ(笑)。



Kei Kumagawaの11月のアンテナ。これだけだ。俺はこれを楽しんで聴いていくよ。「リバーサイド」のアートワーク、編成、インスタレーション、そういうものの「らしさ」については、これから、あなたが岡村釦さんとの関係性の中で一つ一つ味わっていけばいい。俺は邪魔しねえ(笑)。僥倖さ。


これがリアルな本物の音楽だ。

この街にもそれがあって、俺は本当に良かったと思ってる。

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